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草木の縄

 茶色く、少しささくれ立った肌。握ると意外とひんやりしている。らせん状に続くよりは切れることなくつながり線が延びていく。草の葉や茎、木の皮などからつくられた縄は、結ぶと縄と縄の摩擦でしっかりと止まり、ひっぱっても伸びない強さがある。
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 縄は、新潟県朝日村にある「はつめの会」でつくられた。会は村に住む70代以上のおばあちゃんたちを中心とする組織。縄をはじめ自然の草木を生かしたものつくりをしている。笹を中綿がわりにつめてつくった枕、手作り豆腐のキット、杉の木を割ってつくる木札など。豊かな里山で、70年以上くらしてきた知恵と技で「今」によみがえらせた贈り物という。

 「くらしの手帳」31号に「はつめの会」の縄を紹介する記事が載った。縄をなうまでの作業や素材ごとの縄の説明、縄を使ったラッピングや輪っか状にして突起に引っ掛けるフックなどの紹介が出ている。記事を見て縄を注文してみた。とどいた縄は、3種類だ。

 ミトラズという稲でつくられた縄は、太さ2ミリほどの細いもの。やわらかで薄く緑がかっていて鼻を寄せると干草置き場のような草のにおいがする。オニグルミの枝の皮でつくった縄は、茶色く太くごわごわとした手触り。木の机のようなにおいがする。ガマの葉でつくった縄は乾ききった草の白っぽい茶色がきれいだ。

 かつて縄をなうことは冬の農閑期の恒例の仕事だった。お米の俵やわらじをつくるのに縄は欠かせない。素材は3種類ほど。しっかりした太い縄がなわれていたという。商品として売ることになり、一般の人に使いやすい細いものをつくることになった。「はつめの会」のおばあちゃんたちの工夫を生かして次々にいろいろな種類の縄が生まれた。現在では14種類にもなっているという。

 縄に使う草木は、どれも採る時期、干す時期が違う。素材にあわせて夏から秋にかけて山に行く。とった後は素材にあわせて煮たり干したり裂いたりと下処理を行う。縄をなうのは今でも主に冬。なうのにも素材にあわせたコツがいる。素材にあわせた工夫でそれぞれの味わいが出る。

 緑っぽい色のミトラズと白いガマ、こげ茶色のクルミの縄を使ってミツアミにし、キーホルダーに結んでみた。ざらざらしている分、軽く結ぶだけでしっかりととまる。3種類とも縄とはいえ色の違いがずいぶんある。ただ結ぶだけでもその違いが楽しめておもしろい。金属質のものが素朴な味わいに見えて親しみがわいてくる。これで鍵をなくすこともないなと思えた。
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by ap23taka | 2008-02-16 18:25 | つくる
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